腎臓の血管に傷がつき、治療しないと腎不全になる可能性がある糸球体硬化症の原因、診断、症状、治療法について医師が解説します。
糸球体が損傷していると、その役割を十分に果たすことができません。その結果、血液中の大量のタンパク質が、血流にとどまることなく、尿中に漏れ出てしまうのです。これが、タンパク尿と呼ばれる状態を引き起こします。
糸球体硬化症は、子供も大人もかかる可能性があります。男性の方が若干発症しやすいと言われています。アフリカ系アメリカ人は、白人よりもリスクが高いです。
糸球体硬化症の原因
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、糸球体硬化症を引き起こす可能性のある腎臓の病気です。FSGSでは、糸球体の一部にのみ瘢痕化が起こります。そして、個々の糸球体の一部のみが損傷します。
未治療のままでは、腎不全に至ることもあります。場合によっては、治療にもかかわらず腎不全に至ることもあります。
FSGSはほとんどの場合、原因なく発症します。このような場合、特発性または原発性FSGSと呼ばれます。しかし、時には原因が判明している場合もあり、そのような場合は以下の通りです。
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HIV感染
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肥満
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鎌状赤血球症
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生まれつきの腎臓の障害
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ヘロインやその他の薬物の使用
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遺伝的な原因(まれに)
FSGSの他に、これらの疾患によって糸球体硬化症が引き起こされることがあります。
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糖尿病
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ループス
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HIV感染症
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鎌状赤血球症
腎臓に損傷を与える疾患も糸球体硬化症の原因となります。これらは以下の通りです。
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糸球体が炎症を起こす糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん
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尿が腎臓に逆流する「逆流性腎症」(ぎゃくりゅうせいじんしょう)
腎臓に害を与える化学物質や薬も糸球体硬化症の原因になることがあります。
糸球体硬化症の症状
最初は、糸球体硬化症の明らかな兆候はありません。時間が経つにつれて、症状が現れることがあります。以下がその例です。
腫れ。
体液が貯留するため、以下のような体の様々な部分にむくみが生じます。
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手
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足
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脚部
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腹部
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目の周り
手
腫れは一般に痛みを伴いません。急激な体重増加を起こすことがあります。
尿に変化がある。
蛋白尿が原因で、泡立ったような尿が出ることがあります。
糸球体硬化症は、多くの場合、定期検診で発見されます。健康診断の検査で、尿中のタンパク質の量が異常に多い(タンパク尿)ことが判明することがあります。あるいは、血液中のタンパク質が少ない(低タンパク血症)ことが示されることもあります。
糸球体硬化症によく伴う症状は以下の通りです。
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高血圧
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高コレステロール
高血圧
糸球体硬化症の患者さんでは、高血圧のコントロールが困難な場合があります。
糸球体硬化症の診断
糸球体硬化症の正確な診断は、腎臓の生検を受けることでしか確かめられません。それは、糸球体硬化症の症状は、他の多くの疾患でも起こりうるからです。
腎生検では、医師がごく少量の腎臓の組織を採取します。この組織は、瘢痕化の徴候がないかどうか検査されます。
糸球体硬化症の診断には、複数の生検が必要な場合があります。これは、瘢痕化が腎臓全体で起こっているわけではないからです。そのため、影響を受けている部分が見つかるまで、医師は腎臓の複数の異なる部分からサンプルを採取して調べる必要があるかもしれません。
その他、以下のような検査が行われることがあります。
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糸球体濾過量(腎臓の機能を測定するもの)
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腎臓超音波検査
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遺伝子検査
糸球体硬化症の治療
糸球体硬化症には治療法がありません。そして、FDAはその治療に特化した薬剤を承認していません。
しかし、いくつかの治療法は、その進行を遅らせ、症状をコントロールすることができます。これらは以下の通りです。
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アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)およびアンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)。これらは、タンパク質の損失を制御するのに役立つ血圧の薬です。
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プレドニンやプレドニゾロンなどのステロイドや、免疫系を抑制する薬で、タンパク質の減少を抑え、腎臓の機能を向上させます。
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コレステロールをコントロールするためのスタチン系薬剤
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血栓を防ぐための抗凝固剤
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体内の余分な塩分を排出し、むくみを解消する利尿剤(水薬
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塩分を控えた食事、運動、ビタミン剤など
肥満や感染症、糖尿病などの病気など、他の病気が原因で糸球体硬化症が起こった場合は、その病気の治療が優先されます。また、血液検査や尿検査で腎臓の状態を定期的に観察しながら治療を進めていきます。
最終的には、糸球体硬化症は治療にもかかわらず、腎臓の機能を低下させることがあります。その場合は、人工透析や腎臓移植が必要になります。