エンヘルトゥは、HER2陽性乳がんという侵襲性の高い乳がんを持つ女性に朗報をもたらすかもしれません。この新薬のコンボ療法は、標準治療であるトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)よりも3倍長くがんの成長を防ぐことができるのです。
エンヘルトゥは、手術で治療できない切除不能なHER2陽性乳がんの治療薬としてFDAに承認されています。また、すでに2種類以上の抗HER2療法による治療を受けている転移性乳がんの治療にも承認されています。転移性とは、がんが体の他の部位に広がっていることを意味します。
HER2陽性乳がんは、HER2と呼ばれる遺伝子のコピーが多すぎる攻撃的なタイプの乳がんです。この遺伝子は、HER2受容体と呼ばれるタンパク質をつくります。この受容体が細胞を成長・増殖させるのです。
エンヘルトゥ療法は、3つの部分からなる併用療法です。
トラスツズマブと基本的に同じ構造の抗HER2薬であるファムトラスツズマブ(Fam-trastuzumab
DXdというトポイソメラーゼⅠ阻害剤の化学療法で、がん細胞の再生能力を阻害するもの
ファムトラスツズマブとトポイソメラーゼⅠ阻害剤化学療法の分子を繋ぐ物質
エンヘルトゥを投与された女性のうち、エンヘルトゥに反応したのは60.9%。6%が完全奏効(がんの痕跡がない)、54.9%ががんの腫瘍の成長が止まるか小さくなる部分奏効を示しました。無増悪生存期間の中央値は16.4カ月で、無増悪生存期間が長い人もいれば、短い人もいました。
エンヘルトゥの副作用として、以下のものが考えられます。
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吐き気・嘔吐
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疲労感
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便秘
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抜け毛
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下痢
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咳
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食欲減退
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貧血
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白血球数の低下
重篤な副作用はそれほど多くありませんが、肺の瘢痕化や炎症、心臓障害などが起こることがあります。以下のような症状がある場合は、すぐに医師に伝えてください。
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息切れ
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乾いた咳
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足首や脚のむくみ
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24時間以内に5ポンド以上の体重増加