フランシス・ガッタ著
卵巣がん治療中は、ほぼ例外なく医学的に閉経が誘発されます。ほとんどの女性は45歳から55歳の間に自然に閉経を迎えます。卵巣癌の治療を受けた閉経前の女性は、早期閉経に追い込まれる可能性が高いのです。医学的あるいは外科的に突然起こる閉経は、何年かかけて起こる自然な閉経よりも厳しい場合が多いのです。また、自然閉経の前にエストロゲンレベルが低くなることで、早期の骨量減少などの長期的な合併症が起こる可能性もあります。
これらの症状を治療することで、より多くの健康上の問題を抱えるリスクを下げ、幸福感を向上させることができます。ほてり、気分の落ち込み、睡眠障害、関節痛、性欲低下、膣の乾燥などの更年期症状がある場合は、医療チームに治療の選択肢を相談してください。
閉経を誘発する卵巣癌の治療法とは？
治療方針は、卵巣がんの大きさや種類、場所、どこまで広がっているか、年齢や健康状態などによって異なります。しかし、治療には、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法などがあります。更年期障害の誘発は、これらの治療法のいずれにおいても副作用として現れます。
手術
がんの広がり具合に応じて、どのような手術が最適かを医師が判断します。
両側卵巣卵管切除術と呼ばれる卵巣と卵管の両方を摘出する手術では、更年期症状が出始めることになります。
卵巣はエストロゲンホルモンを分泌しているため、卵巣がないとこのホルモンが不足し、急激な更年期障害が起こります。このような更年期障害を手術性更年期障害といい、早発閉経や早期閉経の代表的なタイプです。
外科的閉経、特に45歳以前の閉経は、心臓病、脳卒中、認知症、パーキンソン病、性的機能不全、骨量減少、気分障害などの長期的な健康問題に結びつきます。
放射線療法
放射線療法は、放射線を用いてがん細胞を損傷させるがん治療法です。医師は、症状の管理やがんが広がっている他の身体の部位の治療のために、放射線療法を推奨する場合があります。
放射線が卵巣に照射されると、卵巣が損傷することがあります。この損傷は、卵巣、骨盤内、膣、胃、または卵巣に近い他の体の部分に放射線を受けた場合に発生する可能性があります。
あなたの年齢、卵巣にある健康な卵の数（卵巣予備能）、放射線の量によっても、放射線療法によって更年期障害が始まるかどうかが決まります。
化学療法
化学療法は早期閉経や早発閉経を引き起こし、妊娠の可能性を低下させる可能性があります。
化学療法が卵巣に与えるダメージは、あなたの年齢、受ける化学療法薬の種類、投与量によって決まります。
化学療法で使用される抗がん剤の一種であるアルキル化剤は、卵巣に対して強い毒性を持つことが研究により明らかにされています。そして、同じくアルキル化剤に属する一般的な化学療法薬であるシスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンの3剤は、卵巣にダメージを与える可能性があることが分かっています。
他の薬も卵巣にダメージを与える可能性がありますが、アルキル化剤に比べればリスクは低くなっています。これらの薬には、次のようなものがあります。
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カルボプラチンやシスプラチンなどのプラチナ系薬剤
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5-フルオロウラシル、シタラビン、メトトレキサートなどの代謝拮抗薬
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ビンブラスチン、ビンクリスチンなどのビンカアルカロイド系薬剤
ホルモン療法
ホルモン療法は一般的な卵巣がんの治療法ではありませんが、必要に応じて担当医が治療計画に加えることがあります。この療法では、卵巣がエストロゲンを分泌するのを止めたり、エストロゲンの濃度を下げたりする薬を服用することで、更年期障害の症状が出ます。
ホルモン療法で使用される薬のうち、更年期症状を引き起こす可能性のあるものの例としては、以下のようなものがあります。
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ゴセレリンやリュープロリドなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン（LHRH）作動薬
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タモキシフェン
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アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールなどのアロマターゼ阻害剤
誘発閉経の副作用
治療による更年期障害は、典型的な更年期障害と同様の症状を引き起こしますが、より深刻になる可能性があります。
誘発性更年期障害の症状には、以下のようなものがあります。
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ほてり
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寝汗
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睡眠障害
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膣の乾燥
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性欲減退
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疲労感
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頭痛
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体重増加
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排尿障害
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気分障害
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筋肉や関節の痛み
また、卵巣がん治療による更年期障害は、時間の経過とともに、次のような健康障害のリスクを高める可能性があります。
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思考力の低下
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不安や抑うつなどの気分障害
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骨量減少
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心臓疾患
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性機能障害
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肥満
卵巣がん治療による更年期障害の症状への対処法
誘発性更年期障害の症状がある場合は、ケアチームに相談するのが一番です。彼らはあなたのための治療計画を作成します。治療計画を立てる際、医師は次のことを考慮します。
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あなたの年齢
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がんの種類とステージ
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更年期障害の症状の重さ
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症状がQOL（生活の質）に与える影響
症状が軽い場合は、生活習慣の改善を勧められるだけかもしれません。症状が中等度または重度であれば、それらを管理するための薬物療法を受けるかもしれません。
生活習慣の改善
がん治療チームは、体重増加、ほてり、膣の乾燥、寝汗、気分不良などの更年期症状を緩和するために、行動や運動、食事の変更を勧める場合があります。
これらのライフスタイルの変化は、骨量減少、心臓病、肥満などの健康問題のリスクを管理するのにも役立ちます。
一般的に、医療チームはあなたに次のようなことを指示するかもしれません。
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骨の健康のために、カルシウムとビタミンDの食品とサプリメントを多く摂る。
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より良い睡眠と規則正しい生活を送る
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アルコール、カフェイン、スパイシーな食べ物を避ける
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座る回数を減らし、動く回数を増やす
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筋トレや有酸素運動をして、健康を維持し、骨を丈夫にする
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水分を多めに摂る
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ストレス管理
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薄着にする、涼しい場所で過ごす、冷えた水を飲む、携帯扇風機を持つなどして、ホットフラッシュを管理する
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膣の乾燥や刺激を和らげるために、膣用潤滑剤や保湿剤を使用する。
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非ホルモン性薬物療法
ほてりや寝汗、気分の変化などに対処するために、医師が抗うつ薬を勧めることがあります。投与される可能性のある抗うつ薬の例としては
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シタロプラム
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デスベンラファキシン
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フルオキセチン
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パロキセチン
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セルトラリン
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ベンラファキシン
シタロプラム
その他、更年期障害の症状を管理するのに役立つ薬として
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クロニジン（血圧を下げる薬
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ガバペンチン、発作の治療で処方される薬
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過活動膀胱の治療薬「オキシブチニン
あなたの症状に合ったホルモン剤以外の薬について、医師に相談してみましょう。あなたに合った薬を最適に処方してくれます。
セラピストの受診
治療による更年期障害は、あなたの精神的、感情的な健康に影響を与える可能性があります。セルフイメージの低下や自尊心の低下、人間関係における親密性の問題、性的問題、気分の落ち込みなどがあるかもしれません。また、赤ちゃんを授かる可能性について落ち込むかもしれません。
早発閉経や早期閉経による精神的健康の改善のために、医師がセラピストやその他の精神衛生の専門家、支援団体を紹介してくれるかもしれません。
セラピーは、不安やうつ症状、ストレス、ほてり、睡眠障害などを管理するのにも役立ちます。
誘発性更年期障害は、突然の副作用を引き起こし、あなたの幸福と生活の質に劇的な影響を与える可能性があります。卵巣がんの治療中または治療後に見られる症状については、医師に相談してください。
