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プライベート・エクイティが所有するナーシングホームに注意。研究結果
文:ケン・テリー
2021年11月19日--親が老人ホームを選ぶのを手伝わなければならないとき、あるいは自分自身が老人ホームのケアが必要なとき、医療専門家に相談したり、友人に相談したり、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の「老人ホーム比較」のウェブサイトを見たりすることができます。CMSのウェブサイトには、各ナーシングホームについて、全体的な評価と健康診断、スタッフの配置、特定の品質対策に関する星の評価が記載されています。
しかし、特定のナーシングホームが、その施設を所有する企業の種類によって、質の高いケアを提供するためにどのような金銭的インセンティブがあるかについては、知らないかもしれない。
11月19日付のJAMA Health Forumに掲載された研究は、この所有権の問題の少なくとも一面に光を当てている。プライベート・エクイティ(PE)企業が老人ホームを買収するとどうなるのだろうか?この研究によると、PEが所有するナーシングホームは、他の営利施設に比べ、品質レベルがやや低いことが予想される。
研究者らは2013年から2017年にかけて、79のPE企業が所有する302のナーシングホームに関するCMSデータと、そうした企業が所有していない9562の営利施設のデータを比較した。長期介護を受ける有料メディケア患者のうち、プライベート・エクイティによるナーシングホームの買収は、PEが所有していない施設で生じた変化と比較して、四半期あたり外来診療感受性(ACS)の救急部(ED)への訪問が11.1%、ACS入院が8.7%増加することと関連していたことが明らかにされた。
さらに、PEが所有するナーシングホームでは、研究期間中、受益者一人当たりのメディケア費用が3.9%、つまり年間約1,000ドル増加している。
また、買収されたナーシングホームをPE企業による買収前のナーシングホームと比較したところ、未調整のアウトカムに統計的に有意な差は見られなかったという。つまり、この2つのコホートはほぼ同等であったということです。
研究者達は、施設や入居者の様々な特徴を考慮した上で、この研究結果を調整した。例えば、PEを導入したナーシングホームは、PEを導入していないナーシングホームに比べ、メディケアの対象となる患者の割合が高く、メディケイドの対象となる患者の割合が低いという傾向があった。
黒人居住者、女性居住者、85歳以上の居住者の割合は、PE所有の施設ではそれぞれ12.4%、65.4%、36.2%、PE所有でない施設ではそれぞれ15.7%、67.8%、39%であった。
最適とは言い難い結果
平均すると、PEが所有する施設の患者よりも、PEが所有しない施設の患者の方が良い転帰をたどっている。しかし、だからといって、営利目的の老人ホームの平均的な転帰が優れているとは言えない。
調査対象となったすべてのナーシングホームにおいて、ACSによる救急外来の受診率は四半期平均で14.1%、ACSによる入院率は四半期平均で17.3%であった。
これらの事象は、適切なケアによって、完全ではないものの、ほぼ予防可能であるはずだと研究者は指摘している。
現在までに、PE企業は米国のヘルスケアに約7,500億ドルを投資しており、老人ホームはこれらの企業の主要なターゲットであり、現在、Skilled Nursing Facilityの5%を所有している、と研究者は述べている。PE企業は20%以上の年間収益を求めるため、短期的に高い利益を上げることにプレッシャーを感じるという。そのため、施設内の人員配置やサービス、備品、設備などが削減される可能性がある。
また、PE企業が購入した老人ホームの中には、レバレッジド・バイアウトで発生した負債を負担している施設もあるかもしれないと研究者は指摘している。
これらの理由から、医療政策立案者の中には、プライベート・エクイティによる老人ホームの買収が長期的に及ぼす影響を懸念する人もいる、と同研究は述べている。